春雷啼かずとも。

カヲル・ムラサキ

2013年03月12日 12:33





すみれの花びらのいろ。あざとい。


湿りけを帯びていく掌。不快。


聞いたことのないノイズ集団の陳列。煩い。


薬屋のぴかぴかに磨かれた床。すべる。


排水溝に流されてゆく、少し前まで、だったもの。


なまあたたかい気配。反対に温度をもたない会話。


ぐるぐるめまぐるしい空模様。予期せず、嵐。


いっせいに花が咲き、いっせいに花が散る。


誰かの涙が、三日後には消える。


誰かの笑顔が、三日後には消える。


もやもやしながらうとうとして、いらいらしながらふらふらする。


青春の鼓動。社会の衝動。国家の制動。世界の動揺。



春は。


なんだか、怖い。


初対面の感覚だけがつぎつぎにどんどん生まれていく。


そして何故かそれは、一ヶ月ももたない。



春は。


なんだか、綺麗。 だから、優しいまでに



ひどく、残酷。









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