春雷啼かずとも。
すみれの花びらのいろ。あざとい。
湿りけを帯びていく掌。不快。
聞いたことのないノイズ集団の陳列。煩い。
薬屋のぴかぴかに磨かれた床。すべる。
排水溝に流されてゆく、少し前まで、だったもの。
なまあたたかい気配。反対に温度をもたない会話。
ぐるぐるめまぐるしい空模様。予期せず、嵐。
いっせいに花が咲き、いっせいに花が散る。
誰かの涙が、三日後には消える。
誰かの笑顔が、三日後には消える。
もやもやしながらうとうとして、いらいらしながらふらふらする。
青春の鼓動。社会の衝動。国家の制動。世界の動揺。
春は。
なんだか、怖い。
初対面の感覚だけがつぎつぎにどんどん生まれていく。
そして何故かそれは、一ヶ月ももたない。
春は。
なんだか、綺麗。 だから、優しいまでに
ひどく、残酷。
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